映画『さくら』において最も胸を締め付けられるポイントが、吉沢亮演じる長男・一樹の死因とその真相です。右足を失った一樹は、懸命なリハビリを続けながらも、かつてのように走れない現実に打ちのめされていきます。
彼を最も苦しめたのは、周囲からの「憐れみ」と「過剰な気遣い」でした。これまで家族の誇りであり、誰よりも完璧な存在であり続けた一樹にとって、妹や弟、両親から向けられる同情の眼差しは耐え難い屈辱でした。さらに、交際していた恋人との関係も歪み、彼の自尊心は粉々に砕け散っていきます。
そして迎えた大晦日、家族が留守の間に一樹は自らの部屋で命を絶つという最悪の選択を下します。映画内では、彼が残した圧倒的な絶望感と、完璧だったがゆえに脆かった青年の孤独が生々しく描かれており、観客に強烈な喪失感を突きつけます。