野生と人間社会の狭間で揺れる子どもの成長譚といえば、スタジオ地図を率いる細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』が金字塔として君臨している。人間として生きる道を選んだ姉・雪と、狼として山へ入る道を選んだ弟・雨。あの静かで切ない別れの瞬間は、多くの観客の涙を絞った。
細田守が提示したのは、母性の温もりと「子離れ」という普遍的な通過儀礼だった。しかし、『娘と狼』はそのテーマを暴力と血の文脈で鋭く裏返す。愛する我が子を人間社会に留め置きたいと願う親のエゴと、本能に従って森へ還ろうとする子どもの野生。スタジオ地図が描いた美しい叙情詩の裏側にある「野生の残酷さ」を容赦なくえぐり出した点において、本作はまさに『おおかみこども』のダークサイド・アンサーと呼ぶべき凄みを放っている。