劇中で描かれる凄惨な刑務所生活は、決して完全な創作ではありません。本作の原作者であるドン・ピアース(Donn Pearce)自身が、1949年に偽造小切手使用などの罪で服役し、実際にフロリダ州の「チェーン・ギャング(鎖で囚人を連結して強制労働を行わせる制度)」で2年間の重労働に服した実体験が色濃く反映されています。
ピアースの証言や当時の歴史的記録によると、20世紀中盤のアメリカ南部刑務所における労働環境は極めて非人道的でした。40度近い猛暑の中、逃走を防ぐための重い足枷を装着されたまま道路のタール舗装や開墾作業に従事させられ、わずかな気の緩みや反抗的な態度に対しては「ボックス」と呼ばれる密閉された極狭の懲罰小屋への監禁や、日常的な暴力が振るわれていました。
映画に登場するルークという人物自体は、ピアースが刑務所内で耳にした伝説的な脱獄囚たちの逸話を統合した造形ですが、権力側が囚人の人間性を奪い、完全なロボットに仕立て上げようとするシステムそのものは、当時の実在した矯正施設の歪みを赤裸々に告発したものです。