かつて映像表現における「タバコ」は、キャラクターの荒廃やダンディズムを即座に伝えるための安直かつ効果的なショートカットだった。しかし今のスクリーンでそれをやれば、時代錯誤の誹りを受けかねない。登場人物が何をどう吸っているのか、その描写ひとつに演出家の意図が透けて見える時代だ。
永山瑛太が演じる現代劇の登場人物たちもまた、時代を呼吸している。社会の底辺で足掻く男であれ、冷徹なインテリであれ、手元に光る小さなLEDの点滅がキャラクターの生活実感をリアルに肉付けする。煙に頼らずとも、眼光と間だけで人間の深みを炙り出せる力量があるからこそ、彼は手元の道具を軽やかにアップデートできたのだ。