高杉の最後を語る上で、最も多くの読者を困惑させ、同時に深い感動を呼んだのが物語の最終盤に描かれた「赤ん坊」の存在です。「高杉は赤子になって生き返ったのか?」「生存説は本当だったのか?」という疑問について、設定の構造を紐解く必要があります。
結論から述べると、生物学的な事実としてあの赤ん坊のベースは虚(吉田松陽)のアルタナによる再生体です。虚という存在は、龍穴のエネルギーが尽きない限り何度でも肉体を再構成する特異体質を持っていました。天鳥船の墜落後、龍穴の地表近くで発見された赤子は、虚の膨大な生命エネルギーが還元され、記憶を持たない純粋な命として再誕した存在でした。
では、なぜそれが銀魂における高杉の赤子転生として語られるのでしょうか。鍵を握るのは、発見したのが鬼兵隊の来島また子と武市変平太であった点、そして高杉が死の直前まで虚のアルタナと細胞を体内に宿していたという事実です。
虚の体内で高杉の魂と意志は激しく衝突し、最終的には虚の不死性すらも焼き尽くすようにして果てました。龍穴から生み出された赤子は、形式上は虚の肉体再生でありながら、空知英秋氏の作劇意図においては「高杉晋助の祈りと魂が注ぎ込まれた新たな命」という二重の意味を付与されています。肉体としての高杉晋助はあの戦艦の中で確実に命を落としましたが、彼が命懸けで護り抜いた世界において、まっさらな命としてやり直す機会を得た――これこそが、作中で示された救済の仕掛けでした。