『鬼滅の刃』に登場する多くの鬼は、人間時代の切ない悲劇や貧困が描かれ、読者の同情を誘う。だが、玉壺(人間時代の名:益次=まなぎ)の過去は、そうした温情をことごとく突き放すものだった。
漁村に生まれた彼は、幼少期から魚の死骸を集めたり、生き物の肉体を切り刻んで壺に詰めたりする異常行動を繰り返していた。両親の水死体を見ても悲しむどころか「美しさに感動した」と語るサイコパス的な感性の持ち主。最後は近所の子どもを殺害した報復として銛で刺され、瀕死となったところを無惨によって鬼に変えられた。
鬼になったから狂ったのではない。人間だった頃からすでに狂っていた——。この徹底した救いようのなさが、玉壺という悪役の純度を極限まで高めている。