伊武雅刀のキャリアを語る上で欠かせないのが、1970年代から1980年代初頭にかけて巻き起こした、二つの巨大なムーブメントです。
第一の転機は、伝説的アニメ『宇宙戦艦ヤマト』のデスラー総統役への抜擢でした。単なる冷酷な侵略者ではなく、誇り高く孤独な美学を宿した独裁者・デスラーを、艶のある低音ボイスで熱演。「ヤマトの諸君……」という名フレーズとともに、日本全国のアニメファンを虜にし、声優としての評価を一挙に不動のものにしました。なお、同作では防衛軍上層部の藤堂平九郎役なども兼任しており、その声の使い分けの巧みさは当時の業界関係者を驚嘆させました。
第二の転機であり、伝説として語り継がれているのが、小林克也や桑原茂一らと結成したラジオ・コントユニット『スネークマンショー』です。ブラックユーモア、痛烈な社会風刺、シュールレアリスムが融合した過激なコント群は深夜ラジオで熱狂的な支持を集め、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)のアルバム『増殖』(1980年)への参加によって社会現象化しました。さらに、秋元康が作詞を手掛けたソロ楽曲「子供達を責めないで」(1983年)では、大人のエゴイズムを逆手に取った前代未聞の語り口調ソングで大ヒットを記録。若き日の伊武雅刀は、アングラカルチャーの旗手としても異彩を放っていたのです。