「伊勢のお土産といえば赤福」という常識は、決して間違いではありません。宝永4年(1707年)創業の老舗が生み出す折箱のあんは、全国的な知名度を誇ります。しかし、伊勢の歴史を紐解けば、江戸時代の「お蔭参り」の頃から参宮街道(伊勢街道)沿いには旅人の空腹を満たす数々の餅屋が立ち並び、日本屈指の餅街道を形成していました。今、地元三重県民が「本当は教えたくない」と口を揃える逸品が脚光を浴びています。
筆頭に挙げられるのが、創業1775年の歴史を誇る「へんばや商店」のへんば餅です。馬で伊勢参りに訪れた旅人が、宮川を渡る手前で馬を返した(へんば)という歴史に由来するこの餅は、平たい米粉の餅に香ばしい焼き目が入り、中には口どけ滑らかなこし餡が詰まっています。赤福よりも甘さが控えめで香ばしく、「伊勢市民のソウルフード」として確固たる地位を築いています。
さらに見逃せないのが、天正3年(1575年)創業、実に450年以上の歴史を誇る「二軒茶屋餅」です。薄皮の餅に上品なきな粉が惜しみなくまぶされた素朴な味わいは、甘党・辛党を問わず唸らせる力があります。また、内宮の宇治橋前で販売される「太閤出世餅」は、豊臣秀吉が愛したと伝えられる両面手焼きの縁起物です。これら赤福以外の伊勢名物餅は、早朝の参拝帰りに焼きたてを買い求める地元客で今も引きも切らない賑わいを見せています。