長年にわたり、なぜ犬がぶどうを食べると腎臓が破壊されるのか、その具体的な原因物質は謎に包まれていた。カビ毒説や重金属説など諸説が飛び交っていたが、近年の獣医学研究により、ぶどうに大量に含まれる「酒石酸(しゅせきさん)」およびその塩類が強力な中毒を引き起こす主原因であることが明確になった。
酒石酸は果実に含まれる有機酸の一種だが、犬の腎臓はこの成分を代謝・排泄する能力が著しく低い。体内に取り込まれた酒石酸は、腎臓のフィルター機能を担うネフロンや腎小管の細胞を直接攻撃し、不可逆的な壊死を引き起こす。一度破壊された腎細胞は再生せず、急激な機能不全へと直行する。