「レシートと同じだから捨てても大丈夫だろう」という油断が、家計に手痛い打撃を与えます。結論から申し上げますと、医療費明細書をすぐに捨てる行為は極めて危険です。確定申告で医療費控除の適用を受ける際、手元に詳細な明細書がないと、本来控除できるはずの費用を申告から除外せざるを得なくなったり、税務署からの照会に答えられず追徴課税のリスクを抱えたりするからです。
確定申告で医療費控除の手続きを行う際、提出書類自体は「医療費控除の明細書」という集計用紙(または画面入力データ)ですが、その正確な作成根拠となるのが各医療機関が発行した医療費明細書です。医療費控除の対象となるのは「治療または療養に必要な費用」に限定されており、美容目的の施術や予防接種、診断書作成料などの保険適用外費用は合算できません。医療費明細書が手元になければ、支払った総額のうち「何が治療費で、何が自費の文書料なのか」を正確に分類できず、結果として申告そのものを諦めてしまうケースが後を絶ちません。
国税庁の統計資料や確定申告相談会場の現場を取材すると、年間10万円の足切りライン(総所得金額等が200万円未満の場合は総所得の5%)をわずかに超えているにもかかわらず、内訳が分からず申告を断念した世帯が毎年多数存在します。わずか3万円の控除であっても、所得税率20%・住民税率10%の納税者であれば約9,000円の税金が戻ってくる計算になります。手元の紙を1枚捨てた代償としては、あまりに重い損失です。