イスラム法(シャリーア)における一夫多妻制は、無制限な権利ではなく、極めて制約の多い例外規定として位置づけられています。聖典『コーラン』には、妻を娶る上限について次のように定められています。
「あなたがたがもし孤児に対して公正にしてやれそうにもないならば、あなたがたが気に入った2人、3人または4人の女を娶れ。だが公平にしてやれそうにもないなら、ただ1人だけにせよ」(聖コーラン第4章3節)
ここにある「妻全員への完全な平等(公平性)」が最大の条件です。住居、衣服、食事といった経済的な扶養義務(ナファカ)はもちろんのこと、夫が各妻の部屋を訪れて過ごす日数や時間、精神的な配慮に至るまで、一切の不平等を許さない厳格な規範が存在します。
伝統的な法規が色濃く残るサウジアラビアの実態を見ると、複数の妻を持つ男性は、妻ごとに別々の独立した住宅やフロアを用意するのが通例です。同じ屋根の下で複数の妻を同居させることは、プライバシー保護とトラブル防止の観点から忌避されます。そのため、莫大な資産や高収入がなければ、2人目以降の妻を迎えることは現実的に不可能です。
現地の女性たちの反応は一様ではありません。「経済的に完全に守られ、家事や育児の負担を分担できる」と前向きに捉える声がある一方、若年層の女性を中心に「夫の愛情を独占したい」「第2夫人を迎えられるのは耐えられない」として、結婚契約書に「夫が再婚した場合は離婚できる権利」を明記するケースが一般化しています。