葉緑体(Chloroplast)とは、植物や藻類などの光合成真核生物の細胞内に存在する細胞小器官(オルガネラ)です。最大の役割は、太陽光の光エネルギーを利用して無機物である水と二酸化炭素から有機物(デンプンなどの炭水化物)を合成する「炭酸同化(光合成)」を行うことにあります。
一般的な植物の葉肉細胞1個あたりに数十個から数百個含まれており、直径はおよそ5〜10マイクロメートル(1ミリメートルの約100分の1)、厚さは2〜3マイクロメートルの凸レンズ状をしています。光学顕微鏡でも緑色の粒として容易に観察できるため、17世紀にアントニ・ファン・レーウェンフックらが顕微鏡観察を始めて以来、生物学における最重要観察対象の一つであり続けてきました。
ここで多くの学習者や一般読者が混同しやすいのが、「葉緑体」と「クロロフィル(葉緑素)」の概念です。教育現場の指導者層からも「この二つの混同が理科嫌いを生む一因」との指摘が頻繁になされます。両者の関係性は極めて明快です。
葉緑体が「工場そのもの(建物や生産ラインの総体)」であるのに対し、クロロフィルは工場内に設置された「太陽光パネル(光を吸収する色素分子)」に相当します。葉緑体の内部にクロロフィルという緑色の色素が大量に敷き詰められているからこそ、葉緑体全体、ひいては植物の葉が鮮やかな緑色に見えるのです。さらに葉緑体内には、クロロフィル以外にも青色光を捕集し過剰な光から身を守るカロテノイドなどの補助色素も配置されており、波長の異なる光を無駄なく吸収する高度な光学システムが組み込まれています。