50代以降の野際さんは、若き日のアクションヒロイン像から一転、日本ドラマ史に永遠に残る強烈なキャラクターを次々と演じ分け、第2の黄金期を迎えました。
1992年に放送された大ヒットドラマ『ずっとあなたが好きだった』(TBS系)では、佐野史郎さん演じるマザコン息子・冬彦を過剰なまでに溺愛する母親・悦子役を怪演。息子の結婚生活に執拗に介入し、嫁を追い詰めていく狂気的な演技は、日本中に「冬彦さん現象」と呼ばれる社会現象を巻き起こしました。続く1993年の『ダブル・キッチン』でも山口智子さんと丁々発止の嫁姑バトルを繰り広げ、「姑役をやらせたら右に出る者はいない」という絶対的なポジションを確立します。
さらに2000年代に入ると、仲間由紀恵さん・阿部寛さん主演の大人気シリーズ『TRICK(トリック)』で主人公・山田奈緒子の母である文字の神様・山田里見役を好演。若き日の写真が劇中の小ネタとして登場したり、かつて自身が歌った『非情のライセンス』をセルフパロディしたりと、自らの華麗なキャリアさえもユーモアに変えてしまう洒脱な演技で、若い世代のファン層を一気に拡大しました。
💡 編集部が注目する演技の深層:
野際さんの演じる母親像が単なる悪役に留まらなかったのは、元アナウンサーならではの明瞭な発声と品格ある佇まいが、狂気やコミカルさの裏にある「人間の孤独と切なさ」を際立たせていたからです。知性があるからこそ生まれる狂気のリアリティは、昭和・平成のテレビドラマにおける至宝でした。