作品全体を温かく包み込みつつ、時に底知れぬ凄みを見せたのが、すいの父親で少女漫画家の黒目丈一を演じた陣内孝則だ。
娘の引きこもりを深く心配しながらも、彼女の苦悩をヒット作のネタにしようとする葛藤と業。陣内孝則は、コミカルで親しみやすい「愛すべき父親」の顔と、創作活動に憑りつかれた「表現者の狂気」を巧みに切り替えてみせた。娘を想う温かい眼差しがあるからこそ、劇中で明かされる真実や決断がより一層胸に迫る。若手中心のキャスト陣において、ベテランならではの重厚な説得力を作品に注入した功績は極めて大きい。