南海高野線の線路沿いを少し歩くと、鼻腔をくすぐる濃厚な香りが漂ってくる。古くから百舌鳥・古市古墳群や刃物の街として知られる大阪府堺市だが、食通たちの間では屈指の焼肉激戦区としても名高い。その中心地で圧倒的な存在感を放つのが、昭和の面影を色濃く残す大衆グルメの象徴だ。
店内は常に満席で、テーブルの向かいに座る同行者の顔すら煙で霞むことがある。だが、常連客は誰一人として眉をひそめない。むしろ、その煙こそが旨さを引き立てる最高の調味料であることを知っているからだ。創業当時から変わらない飾り気のないパイプ椅子と木目調のテーブル、そして壁に貼られた年季の入った短冊メニュー。鮮度抜群のホルモン焼きが網に乗せられるたび、威勢のいい音とともに立ち上る炎が、店内の高揚感を一気に最高潮へと押し上げる。