私たちが日常で何気なく見上げる緑色の標識、非常口サイン(Emergency Exit Sign)。走る人物が描かれたあのグラフィックには、人間の生命を守るための緻密なルールと科学的根拠が潜んでいる。
1970年代の相次ぐ火災事故を受け、避難誘導標識の標準化が緊急の課題となった。そこで多摩美術大学教授(当時)の太田幸夫らが中心となり、研ぎ澄まされたのがあの非常口のデザインだ。実は「緑地に白の人物」と「白地に緑の人物」では意味が大きく異なる。緑地の標識は「非常口そのものがそこにある場所」を示し、白地の標識は「非常口がある方向」を示す誘導標識なのだ。さらに、火災による濃煙の中でも視認性が最も高く、心理的な恐怖を和らげる色として緑色が科学的に選定された。太田幸夫らの緻密な設計は、今も世界中で幾多の命を救い続けている。