疲労や緊張による言葉の詰まりであれば休息でリセットできますが、命に関わる一刻を争う疾患が隠れているケースもあります。その筆頭が「脳梗塞」および「一過性脳虚血発作(TIA)」です。
左脳(多くの右利きの人における言語優位半球)の血管が詰まると、言語中枢への血流が途絶え、失語症や構音障害が突如として出現します。失語症には大きく分けて2つのタイプが存在します。
- 運動性失語(ブローカ失語):相手の言っている意味は完全に理解できるが、自分の口から言葉をスムーズに発声・構成できない状態。
- 感覚性失語(ウェルニッケ失語):口から滑らかに言葉は出るものの、言い間違い(錯語)だらけになり、相手の言っている意味も正確に把握できない状態。
日本脳卒中学会などが啓発を続ける国際的な判断基準「FAST(ファスト)」は、日常の中で瞬時に異常を察知するために欠かせない指標です。
- F(Face / 顔):口角が片方下がり、笑顔を作ると左右非対称になる。
- A(Arm / 腕):両腕を前方に水平に上げたとき、片方の腕が自然と下がってしまう。
- S(Speech / 言葉):ろれつが回らない、短い簡単な文(「今日は良い天気です」など)が正しく復唱できない、言葉が出ない。
- T(Time / 時間):これらの症状が1つでもあれば、迷わず直ちに救急車を呼ぶ。
特に危険なのは、数分から数十分で症状が綺麗に消えてしまう「一過性脳虚血発作」です。「治ったから大丈夫」と放置すると、48時間以内に本格的な重症脳梗塞を発症する確率が極めて高いことが医学統計で証明されています。「一瞬でも言葉が完全に失われた」という事実は、決して軽視してはなりません。