2002年、ひとつの楽曲が日本の音楽業界に激震を走らせた。元ちとせのメジャーデビューシングル『ワダツミの木』である。シマ唄のDNAを宿した変幻自在のヴォーカリゼーションと、エキゾチックなポップネスの融合。当時、オフィスオーガスタに所属した彼女が放ったその声は、瞬く間にチャートの頂点へと駆け上がり、列島中のリスナーに強烈なカルチャーショックを与えた。
彼女の成功は、J-POPの文脈において「離島の伝統歌唱」が世界基準のポップアートになり得ることを証明した歴史的転換点だった。シマ唄の歌い手(唄者)としての厳格な鍛錬に裏打ちされたピッチの正確さと、圧倒的な情感の波立ち。現在も彼女は自らのルーツである島に暮らしながら、自然の息吹と共鳴するオーガニックな音楽活動を継続しており、その揺るぎないスタンスは後続のアーティストたちにとって偉大なる道標であり続けている。