鼻あてが肌に食い込んでズキズキと痛む現象には、明確な物理的根拠が存在する。物理学の基本原則通り、圧力は「力÷面積」で算出される。一般的な眼鏡の総重量が15g〜35g程度であるのに対し、標準的なハード樹脂パッドの接地面積はごくわずかだ。さらに鼻骨の傾斜に対してパッド面が「点」でしか接触していない場合、極小の範囲に過剰な荷重が集中し、毛細血管を圧迫して強い痛みを引き起こす。
痛みを放置して装用を続けると、皮膚組織は慢性的な圧迫と摩擦から生体を保護しようと防衛反応を起こす。これがメラニン色素の過剰沈着を招き、眼鏡を外しても消えない「茶色いシミのような跡」へと変貌を遂げる。皮膚科医や眼鏡作製技能士が口を揃えて指摘するのは、「摩擦による炎症をいかに防ぐか」と「圧力をいかに広い面積へ分散させるか」の2点である。
また、鼻パッド跡がつかない状態を作るためには、テンプル(眼鏡のつる)の調整も見逃せない。耳の後ろにかかるホールド力が弱すぎると眼鏡が前方にずり落ち、テコの原理によって全重量が鼻骨の頂点へダイレクトにかかってしまう。逆に抱き込みが強すぎると顔面が前方へ押し出され、パッドが肌へ無理やりめり込む。つまり、痛みの原因は鼻パッド単体だけでなく、フレーム全体の三次元的なバランスの崩壊に直結しているのだ。