言葉の発音が時代とともに濁っていく現象は、日本語学・音韻論の世界で「濁音化」または「連濁」として研究されている。言語学者の金田一秀穂氏は、発音の省力化や滑らかさを求める人間の息遣いが、音を自然と濁らせるエネルギーになると指摘する。前後の音のつながりで無意識に口の動きを滑らかにしようとする結果、「きょう・そん」という引っかかりが「きょう・ぞん」へとスムーズに滑走するのだ。
日本語の歴史を紐解くと、こうした難読・濁音化慣用句は数多く存在する。「依存(いそん/いぞん)」や「早急(さっきゅう/そうきゅう)」のように、本来の漢音から慣用読みへの移行が定着した例は珍しくない。音韻の変化は言葉の乱れではなく、言語が生き残るための合理的な進化プロセスの一環である。