多くの人が「靴底が均等に減らない=身体の異常」と考えがちですが、歩行運動の構造上、靴のかかと外側が減る原因のすべてが悪質というわけではありません。人間の足は、着地時の衝撃を吸収するために、かかとのやや外側から地面に接地し、親指の付け根へと抜けていく「あおり運動(ロッカーファンクション)」を自然に行う設計になっています。そのため、新品から履き込んでかかとの外側後端が数ミリ程度削れる現象自体は、生理学的に健全な接地が行われている証拠でもあります。
深刻な問題となるのは、かかとだけでなく靴底の前足部まで外側が一様に削れているケースや、靴が外側に大きく傾くほど片減りしている状態です。靴の外側が減る理由を突き詰めると、足裏全体で衝撃を分散できず、体重が外側へ逃げ続ける「外側荷重(アンダープロネーション)」に行き着きます。足首関節が外側へ傾く「足首の回外と偏平足」やハイアーチ(甲高で土踏まずが高すぎる足)の連鎖により、足本来のサスペンション機能が麻痺している状態です。
この偏った衝撃を放置すると、メカニカルストレスは足首から膝、そして腰へと上行性に連鎖します。特に膝の内側へ集中する負荷は凄まじく、厚生労働省の運動器疾患データでも指摘されている通り、中高年以降における変形性膝関節症と歩き方の歪みは密接にリンクしています。膝の内側軟骨が摩耗してO脚がさらに進行し、歩行時の痛みから運動量が激減してメタボリックシンドロームや要介護リスクが高まるという、負のスパイラルに直結するのです。