上下の差だけでなく、左右の腕で測定した数値の乖離も厳重な警戒を要するファクターです。日本高血圧学会のガイドライン等でも、初診時には両腕での血圧測定が推奨されています。通常、利き腕の筋肉量や生体リズムの影響により5〜10mmHg程度の軽微な左右差が生じることは生理的範囲内ですが、血圧の左右差15以上のリスクは統計的にも明白な病態を反映しています。
血圧の左右差が恒常的に15〜20mmHg以上開いている場合、数値が「低く出ている側の腕」へ血液を届ける動脈のどこかに、狭窄や閉塞が生じている可能性を疑わなければなりません。代表的な疾患が、腕へ向かう太い動脈にプラークが詰まる「鎖骨下動脈狭窄症」や、全身の動脈硬化が進行する閉塞性動脈硬化症(ASO)です。
太い血管の内腔が狭まると、その先へ流れる血液の勢いが減衰するため、測定値は見かけ上「良好な低血圧」のように表示されてしまいます。片腕だけの測定で「上115だから正常だ」と安心していたところ、実は反対側の腕では上140の危険水準にあり、低値の腕では動脈狭窄が進行していたという事例は臨床現場でも後を絶ちません。血管障害による左右差を放置すると、心血管死や脳梗塞の発生率が健常群と比較して約1.5倍から2倍近くに跳ね上がることが各種追跡研究で確認されています。