旭川地方裁判所で開かれた裁判員裁判は、市民の極めて高い関心を集めました。初公判の朝には、わずか23席の一般傍聴席を求めて300人を超える人々が長蛇の列を作り、法廷周辺は異様な緊迫感に包まれました。法廷に現れた内田被告は起訴内容に対し、「私には殺意はありませんでしたし、橋から落下させていません」と述べ、殺意と実行行為を一貫して否認しました。
公判における最大の争点は、以下の2点に集約されました:
- 殺意の有無:高い橋から落とせば死亡する危険性を認識していたかどうか。
- 実行行為の認定:自ら手を下して突き落としたのか、あるいは心理的・物理的に追い詰めて転落させたことが「殺害」に該当するか。
検察側は、先行して判決が下されていた共犯の女(懲役23年の判決が確定)の供述調書や、当時の現場状況、被害者が抵抗不能な状態であったことを詳細に提示。「被害者の尊厳を徹底して踏みにじり、保身のために冷徹に命を奪った犯行態様は悪質極まりない」として、有期懲役の上限に近い懲役27年を求刑しました。
旭川地裁が下した司法判断は、検察側の主張を全面的に認めるものでした。判決理由において裁判長は、被害者を欄干に立たせて脅迫した一連の流れを「被告による殺人の実行行為」と認定。内田被告の「自発的に飛び降りた可能性がある」という弁解を退け、求刑通り懲役27年の実刑判決を言い渡しました。
判決後に行われた裁判員たちの記者会見は、この事件の異常性と心理的負担を如実に物語るものでした。ある裁判員は涙を浮かべながら、「ご遺族の無念を思えば、懲役27年という数字で本当に正しかったのか。申し訳ない気持ちが残る」と声を絞り出すように吐露。極刑や無期懲役を科すことが法律上困難な枠組みの中で、市民感覚と刑法の壁の間で苦悩し抜いた現場の生々しい葛藤が浮き彫りとなりました。