神社仏閣巡りの感覚で訪れると、思わぬところで神宮独自のルールに抵触してしまうことがあります。伊勢神宮の尊厳を守り、清々しい気持ちで参拝を終えるために知っておくべき「やってはいけないこと」を整理します。
1. 正宮で個人的な「現世利益のお願い」をすること(私幣禁断)
伊勢神宮の最も格式高い社殿である「正宮(外宮の豊受大神宮正宮、内宮の皇大神宮正宮)」は、古代より天皇陛下以外の私的な奉幣が禁じられてきた私幣禁断(しへいきんだん)の聖域です。ここでは「合格祈願」「商売繁盛」「良縁祈願」といった個人的な願望を伝えるのではなく、日々の生命の維持や平穏な暮らしに対する感謝の念(神恩感謝)と、世界・国家の安泰を祈るのが本来の作法です。個人の個人的な挑戦や願い事を打ち明けたい場合は、正宮のすぐ近くにある「多賀宮(外宮)」や「荒祭宮(内宮)」を参拝しましょう。ここには神の積極的で行動的な側面である「荒御魂(あらみたま)」が祀られており、個人の背中を押す力強い後押しをいただけます。
2. 御垣内および撮影禁止エリアでの無断撮影
内宮の正宮へ続く石段の下までは撮影が許可されていますが、石段の上および白布(御幌・みとばり)の向こう側は完全撮影禁止です。スマートフォンの普及に伴い、石段の上からカメラを向ける参拝者が後を絶ちませんが、神域の尊厳を侵す行為として警備員から厳重な注意を受けます。また、境内全域でのドローン飛行や商業目的の無許可撮影も固く禁じられています。
3. おみくじを探し求めること(神宮におみくじが存在しない理由)
「伊勢神宮でおみくじを引きたい」と授与所を探す参拝者が多く見られますが、伊勢神宮の境内にはおみくじが一切置かれていません。その理由はシンプルかつ明快で、「一生に一度はお伊勢参り」と称された時代から、伊勢の神前に無事辿り着いたその日そのものが人生最高の吉日(大吉)であると考えられているためです。吉凶を占う必要がないほど尊い場所にいるという神道観の現れであり、授与所では御札やお守り、御朱印を受けるのが正解です。