熊対策の定番とされてきた「熊鈴」ですが、状況によっては逆効果になる理由が存在します。本来は人間の接近を事前に熊へ知らせ、接触を回避させるための道具ですが、観光客の捨てた残飯や果樹の味を覚えた個体にとって、鈴の音は「食べ物を持った人間が近づいてきた合図」として学習されてしまうリスクが指摘されているためです。
また、沢沿いや強風下では鈴の音が周囲にかき消され、至近距離での不意な遭遇(バッタリ遭遇)を引き起こす要因にもなります。音だけに頼るのではなく、視界の悪いカーブや藪の手前では人間の声を出して存在をアピールすることが肝要です。
直接的な撃退ツールとして科学的に最も効果が実証されているのがクマスプレー(熊撃退スプレー)です。主成分である高濃度カプサイシン(トウガラシエキス)が熊の目や鼻の粘膜を強烈に刺激し、一時的な行動不能状態に追い込みます。
ただし、正しい使い方を知らなければ効果を発揮できません。リュックの底にしまっていては取り出す間に襲われてしまうため、必ず専用ホルスターで腰や胸元の瞬時に手が届く位置に装着します。熊が突進してきたら安全ピンを引き抜き、5メートル前後の距離に達した段階で顔面を狙って1〜2秒間噴射します。噴射ガスが霧状の壁を作り、熊が突っ込むことで撃退効果が最大化します。