尊徳のコンサルティングは、徹底した「現地現物」から始まった。荒れ果てた村に入ると、まず土壌の味を確かめ、過去数十年の収穫高と気象データを照合。村人一人ひとりの家族構成や性格、借金の額まで精緻に台帳へ記録した。彼が主導した農業経済・地方創生の手腕は、現代のトップコンサルタントすら舌を巻くレベルにある。
彼が駆使した原則は極めてシンプルでありながら強力だ。分相応の生活設計を立てて支出を抑える「分度(ぶんど)」、そして削り出した余剰資金を他者や未来の投資へ回す「推譲(すいじょう)」。この二つを厳格に運用させ、インセンティブ報酬を導入して怠惰な空気を一変させた。結果として600を超える農村が自立的再生を果たした事実は、補助金頼みから脱却できない現代の地域再生プロジェクトにとって耳の痛い教訓に違いない。