観光客がよく陥る勘違いがある。「信玄餅は1つのメーカーだけが作っている」という誤解だ。実際には、桔梗屋が手がける「桔梗信玄餅」と、金精軒が販売する「信玄餅」の2つの本流が存在する。この両者の対決こそ、和菓子業界でも屈指の味わい深いテーマだ。
桔梗屋の製品は、丹念に煮詰められた黒蜜の濃厚な甘みと、少し硬めで弾力のあるお餅が特徴的。一口食べれば黒蜜のインパクトが口いっぱいに広がる。対照的に金精軒は、地元山梨県産の上質な梨北米を100%使用し、お餅自体の本来の風味や柔らかさを極限まで引き立てる。黒蜜もあっさりとした上品な仕上がりだ。食べ比べてみると、その設計思想の違いに誰もが驚かされる。