SNSや大手教育コミュニティ、Q&Aサイトに投稿される保護者の生の声を取材すると、深刻な親子の衝突が見えてきます。
「毎日漢字ノートに1文字10回ずつ書かせているのに、テストになると送り仮名を間違えて60点だった」
「子どもが机に向かって泣きながら練習帳を埋めているが、翌週にはまったく覚えていない」
「テストの答案を見ると、形は合っているのにトメやハライで赤ペンを入れられて減点ばかり」
こうした声に対し、長年公立小学校で教鞭を執り、現在は教育アドバイザーとして活動する関係者は次のように警鐘を鳴らします。
「多くのご家庭が陥る最大の失敗は、『書く回数を作業としてこなすこと』を目的にしてしまう点です。人間は手を動かしているとき、頭を使っていないことが往々にしてあります。特に6年生男子に顕著ですが、漢字ノートのマス目を早く埋めるために、同じ漢字の偏(へん)だけを縦に10個書き、そのあと旁(つくり)を縦に10個書くような無意味な作業を繰り返している子が非常に多いのです」
認知心理学における「リトリーバル・プラクティス(想起練習)」の理論が示す通り、人間の脳は「インプット(手本を見て書き写す)」している時ではなく、「アウトプット(思い出そうとして脳に負荷をかける)」した瞬間に最も記憶を強化します。手本を見ながら10回書き殴る時間があるなら、手本を隠して1回自力でテストし、間違えたものだけを3秒間凝視して再テストする方が、定着率は圧倒的に高くなります。