長年秘匿されてきた軍関係の解禁資料やルバング島現地の元住民による最新の証言は、小野田の潜伏劇が単なる「情報の遮断による孤立」ではなかったことを物語っている。彼の任務は、連合軍の進攻後も現地にとどまり、遊撃戦(ゲリラ戦)を展開しながら情報を収集し続ける「残置諜者」としての極秘作戦そのものだった。
現地に残された作戦記録や証言を精査すると、小野田らは単に身を隠していたわけではなく、米軍や現地警察の動きを徹底的に監視し、防衛体制を維持していた。教科書が描いてきた「取り残された犠牲者」というステレオタイプとは大きく異なり、彼らは最期まで軍人としての冷徹な計算と高度な生存戦略に基づいて行動していた。この潜伏30年の実体こそ、私たちが再検証すべき歴史の核心と言える。