文部科学省が実施する全国体力・運動能力、運動習慣等調査のデータを見渡すと、子どもたちの走力には興味深い傾向が表れている。長引いた活動制限の余波から回復傾向にあるものの、俊敏性やダッシュ力に関しては二極化が顕著だ。放課後に民間サークルやかけっこ教室で専門指導を受ける児童と、日常的に外遊びの機会を持たない児童とのタイム差は、学年が上がるにつれて拡大する一方である。
スポーツ科学の進化に伴い、短距離走の指導理論も劇的に更新された。「腕を強く振れ」「前傾姿勢を崩すな」といった旧来の精神論的な指示は影を潜め、地面からの反発力をいかに重心移動へ変換するかというバイオメカニクスの知見が、ジュニア世代の現場にも浸透しつつある。指導の質が記録をダイレクトに左右する時代に突入したと言える。