一生懸命に手足を動かしているにもかかわらず、タイムが伸び悩む子どもたちには共通の力学的エラーが存在します。ジュニア陸上指導の現場やバイオメカニクス研究の視点から分析すると、主な原因は次の3点に集約されます。
第1に、踵(かかと)からの着地によるブレーキ現象です。走るのが苦手な児童の多くは、歩く動作の延長で足を前方に投げ出し、踵から地面に足を接地させています。進行方向に対して踵が前に出ると、体重が乗った瞬間に強い減速ブレーキがかかり、せっかくの前進エネルギーが相殺されてしまいます。
第2に、スタート直後の急激な上体の起き上がりです。「早く前を見よう」「遠くへ行こう」と焦るあまり、スタートの合図と同時に身体が垂直に立ってしまい、加速に必要な前傾角度が失われます。50メートルという短い距離では、最初の15〜20メートルで作る一次加速が勝敗を左右するため、頭がすぐに上がってしまうとトップスピードに到達できません。
第3に、身体の軸がぶれる「横振り」の腕振りです。腕を胸の前で交差するように横へ振ると、体幹が左右にねじれ、推進力が横方向に逃げてしまいます。走る動作における腕振りの本質は、下半身の骨盤を前方へ引き出すためのカウンターアクションであり、横揺れは前進スピードを著しく阻害します。