確執が決定打となったきっかけは、作品の根幹をなす演技スタイルの真っ向からの衝突だ。今作は一瞬の隙も許されない緊迫したサスペンスアクション作品。キャラクターの極限状態を描き出すにあたり、小栗旬が追求する泥臭く人間味あふれるリアルなアプローチに対し、綾野剛はどこまでもシャープで完璧に研ぎ澄まされた計算し尽くされた表現を提示した。
一歩も譲らないクリエイター同士の執念は、次第にリハーサルの枠を超えて激しい議論へと発展していった。監督を交えた交錯の末、お互いのテイクに対する疑問が表面化。撮影の進行がたびたびストップする事態へと至る。この熱量のズレと妥協なき姿勢のぶつかり合いこそが、周囲に「共演NG」とまで囁かれる決定的な引き金となったのである。