激動の果てに理研を去った小保方氏は、長い沈黙を破り手記『あの日』を上梓した。そこに記されていたのは、メディア報道によって作り上げられた偶像とは大きく異なる当事者の内面と、理研内部での凄絶な人間模様だった。自らの未熟さを認めつつも、実験データの取り扱いに関する責任の所在や、梯子を外された若手研究者としての苦悩が生々しい筆致で吐露されている。
手記の出版は世間に再び大きな議論を呼んだ。「自己保身のための言い逃れ」と切り捨てる声がある一方で、若手研究者を看板に仕立て上げ、問題が発覚するや否や全責任を負わせて切り捨てた巨大組織の冷徹さを浮き彫りにしたとも評された。科学的な真偽とは別に、研究組織の権力構造とガバナンスの歪みが露呈した瞬間でもあった。