城郭建築学の視点から高知城を読み解くと、随所に張り巡らされたトラップの緻密さに驚かされる。現存十二天守の中で唯一、本丸御殿(懐徳館)と天守が直結して現存していることばかりが注目されがちだが、防衛設計の本質は登城路のそこかしこに潜んでいる。
象徴的なのが、天守台を取り囲む石垣に仕込まれた「忍び返し」だ。鋭利な鉄槍が外側に向けてびっしりと並ぶこの意匠は、実戦を想定した生々しい遺構として全国唯一のもの。よじ登ろうとする敵兵を物理的に串刺しにする冷酷なまでの実用性が、今も生々しく残る。
さらに本丸へと続く「詰門」は、二階建ての橋廊下構造になっており、一見すると単なる通路に見える。しかし、侵入した敵が門をくぐろうとすると二の丸と三の丸を繋ぐ空堀の底へ誘い込まれ、頭上から四方八方に弓矢や鉄砲の雨を浴びる仕掛けだ。美しさの裏に潜む殺意の深さに、思わず背筋が凍る。