なぜ世間では「音大生=実家が金持ち」と決めつけられるのか。それは大学へ支払う授業料そのもの以上に、幼少期から現在に至るまでの莫大な周辺コストが家計を圧迫するためです。
特にピアノ科をはじめとする器楽専攻生を抱える家庭では、次のような「見えない実費」が発生し続けます。
- 楽器本体の購入・維持費:実技練習に必須となるグランドピアノは、入門モデルでも200万円前後、欧州名門ブランド(スタインウェイ等)になれば1000万〜2000万円に達します。さらに年数回の定期調律費用(1回あたり1万5000円〜3万円)が一生涯発生します。
- 防音室の施工費用:昼夜を問わず練習環境を確保するため、自宅に完全防音室を設置する場合、リフォーム工事代・ユニット設置代として約150万〜400万円が必須です。
- 外部指導者への個人レッスン料:大学教員や外部著名演奏家による個人レッスンは、1回あたり1万5000円〜3万円が相場。コンクール出場前には月数十万円単位の臨時謝礼が飛び交うことも珍しくありません。
- 遠征費・楽譜代・衣装代:輸入楽譜は1冊数千〜1万円以上。コンクールごとのドレス代、交通宿泊費、伴奏者への謝礼など、細かな出費が毎月積み重なります。
義務教育期間から受験期までの10名前後にわたる支出累計は、一般的な私立中高一貫校へ通わせる教育費を優に超えます。大学に入る前段階でこうしたハードルを越えられる世帯は、結果として相応の金融資産や高年収を持つ家庭に偏らざるを得ない構造的必然性があるのです。