稀勢の里の土俵人生を振り返る上で、まず直視すべきは横綱昇進後の数字です。横綱在位は2017年春場所から2019年初場所までの全12場所。その間、本場所の土俵に上がった際の横綱通算成績は36勝36敗97休、勝率はちょうど5割(.500)でした。
毎場所のように13勝以上のハイアベレージを残すことが宿命づけられる横綱において、勝率5割というデータは極めて異例の数字と言わざるを得ません。しかし、この勝率の内訳を時系列で辿ると、怪我の前と後で全く異なる実態が浮かび上がってきます。
新横綱となった2017年春場所の13勝2敗、そして昇進直前の2017年初場所(14勝1敗)で見せた相撲は、まさに脂の乗り切った絶対的な横綱相撲でした。幕内通算成績で見れば800勝492敗125休、通算勝率は.619をマークしており、長期にわたり大相撲の看板を背負い続けた強豪であったことは揺るぎない事実です。
稀勢の里の生涯における優勝回数一覧は通算2回(2017年1月初場所=大関、2017年3月春場所=新横綱)。幕内最高優勝の回数こそ2回にとどまりましたが、大関在位31場所の間には優勝次点(準優勝相当)を実に12回も記録しています。白鵬、日馬富士、鶴竜という強烈なモンゴル出身横綱陣と真っ向勝負を演じ、常に賜杯争いの中心にいた実力派でした。