歌麿の真骨頂は、女性の「人相」からその性格や境遇、心の揺らぎまでもカンバスに定着させた点にある。その頂点に位置する傑作が『婦女人相十品』シリーズだ。遊郭の最高峰に君臨する花魁から、市井の茶屋娘、煙管を手にして物思いに沈む女まで、それぞれの身分や日常のリアルな感情が恐ろしいほどの解像度で描き出されている。
中でも代表作『ポッピンを吹く娘』は、ガラス製の玩具を口にくわえて息を吹き込む一瞬の無邪気さと、そこはかとない色気が絶妙に同居する名作だ。ポッピンの鳴る「ポコペン」という音まで聞こえてきそうな臨場感。歌麿は女性を着せ替え人形としてではなく、欲望や倦怠、純真さを抱えた生身の人間として観察し尽くしていた。