彼のキャリアを振り返ると、無口で影のある男を演じた時の存在感には定評があった。代表作である『MOZU』をはじめとするサスペンスドラマでは、極限状態に追い込まれた警察官役を体当たりで熱演し、ハードボイルドな世界観を見事に体現。肉体的な追い込みと研ぎ澄まされた演技力は、すでに当時の映像作品でも異彩を放っていた。
そして濱口竜介監督との出会いが、彼の才能を世界へと決定的に解き放つ。繊細な人間の感情を描き切った『ドライブ・マイ・カー』での静かな熱演は、国内外の映画賞を総なめにした。過去のサスペンス作品で培われた内面の力強さと、海外で高く評価された静謐な演技美学。それらすべてが結実した今、彼の髭姿には過去の全キャリアが滲み出るかのような重厚な渋みが宿っている。