和歌山県中部に位置する御坊市は、歴史ある寺社や豊かな自然に恵まれた街ですが、食通たちの間では「川常を目指して遠征する街」としても認知されています。なぜ交通アクセスの決して容易ではない地方都市の一角に、これほどまでの人波が絶えないのでしょうか。
その最大の源泉は、川常が鰻の卸問屋をルーツに持っている点にあります。毎朝厳選された活鰻が問屋ならではの確かな目利きで仕入れられ、熟練の職人の手によって素早く捌かれます。中間マージンを極限まで削ぎ落とすことで、一般的な都市圏の専門店であれば5,000円から7,000円を下らない最高品質の鰻を、驚くべき値付けで提供できるサプライチェーンを確立しているのです。
焼きの技法は、蒸しの工程を入れずに炭火の強火で一気に焼き上げる伝統的な「関西風地焼き」を採用しています。備長炭の熱線で外皮はパリッと香ばしくキャラメリゼされ、内部には上質な脂と旨味が完全に閉じ込められます。箸を入れた瞬間に響く軽快な感触と、口に運んだときに広がる野性味あふれるジューシーな脂の甘み。この鮮烈なコントラストこそが、一度訪れた客を虜にし、リピーターへと変える原動力となっています。