指名手配といえば、固いゴシック体で「指名手配」「情報をお寄せください」と記され、無表情な顔写真が並ぶのが当時の警察の定型でした。しかし、そうしたポスターは街の風景に溶け込んでしまい、一般市民の記憶にほとんど残らないという構造的な弱点を抱えていました。
この現状を打破するために立ち上がったのが、当時の徳島県警捜査一課長だった山田忠義氏です。事件から数年が経過し、風化の危機に直面する中で、「とにかく立ち止まって見てもらえるポスターを作らなければ、犯人には辿り着けない」という強烈な現場の危機感がありました。
そこで生まれたのが、写真の被疑者に向けて直接呼びかける「おい、小池!」というフレーズでした。上から目線のタメ口で呼びかけることで、道行く人々に「えっ、何だこれは?」という違和感と驚きを与え、同時に逃亡を続ける小池容疑者本人への心理的圧迫を狙ったのです。
その後も「おい、小池! そろそろ自首したらどうだ」「おい、小池! まだ逃げる気か」といった第2弾、第3弾のポスターが制作され、テレビや雑誌などの各種メディアでも大々的に取り上げられました。指名手配ポスターに明確なキャッチコピーとストーリー性を持たせる手法は、当時の警察広報において極めて画期的な試みでした。