大金を手にした人間が陥りがちなのが、孤独感による精神の崩壊だ。サツキさんも、最初の数ヶ月は「誰も信じられない」という疑心暗鬼に陥ったという。親兄弟にすら、当選の事実は伝えていない。言えば関係性が壊れる確信があったからだ。
そんな彼女を救ったのは、皮肉にも「退屈で面倒なはずの仕事」だった。毎日決まった時間に行き、同僚とくだらない雑談をし、上司の小言を聞く。その平凡なルーティンこそが、彼女の精神を現実世界に繋ぎ止める命綱となっていた。「お金があるからいつでも辞められる」という絶対的な余裕が、逆に仕事へのストレスを無くし、皮肉にも社内での評価が上がるという現象まで起きている。