音羽屋の屋号を掲げる尾上菊五郎家は、市川團十郎の成田屋と並び称される歌舞伎界の双璧だ。その中心に立つのは、長年にわたり江戸歌舞伎の世話物や粋な立役・女方を体現してきた七代目 尾上菊五郎である。妻は日本映画界を代表する大女優・富司純子。この二人の間に生まれたのが、長女の寺島しのぶと、長男の五代目 尾上菊之助だ。
寺島しのぶは、歌舞伎の家に生まれながら「女性であるがゆえに舞台に立てない」という伝統の壁に直面した。しかし、彼女はその悔しさを表現へのエネルギーへと転換し、ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)を獲得するなど国際派女優として圧倒的な地位を確立した。フランス人映画監督のローラン・グナシア氏と結婚し、誕生した長男の寺島眞秀(尾上眞秀)は、現在日仏の架け橋となる新星として注目を集めている。
一方、弟の五代目 尾上菊之助は、中村吉右衛門(二代目・播磨屋)の四女である波野瓔子氏と結婚。音羽屋と播磨屋という歌舞伎界屈指の名門同士の婚姻は、両家の歴史的融和を象徴する出来事となった。二人の長男である尾上丑之助を含め、この一族は常に梨園の最前線でまばゆい光を放ち続けている。