現場鑑識の手法は目覚ましい進化を遂げた。警視庁刑事部をはじめとする全国の警察組織では、事件現場の三次元スキャンや高解像度マクロ撮影が標準化されている。微細な繊維片から皮下出血の深層までをデジタルデータ化し、科学捜査研究所(科捜研)の高度な解析にかけることで、目に見えない証拠を浮かび上がらせる。
だが、記録のデジタル化は同時に、複製と漏洩のリスクを飛躍的に増大させた。物理的な印画紙やネガフィルムの時代には物理的な施錠管理で防ぎ得たものが、今やUSBメモリひとつ、あるいはクラウドへの不正アクセスひとつで全世界へ流出する。捜査機関は証拠保全チェーンの再構築と内部セキュリティの刷新を迫られている。