なぜ大会直前になるたびに「地上波放送なし」という噂が飛び交い、視聴者に不安が広がるのでしょうか。その背景には、日本のテレビ局が直面する放映権料の歴史的インフレと収支構造の崩壊があります。主な要因は以下の3点に集約されます。
第1に、主催者であるWBCインク(MLBおよびMLB選手会主導の運営会社)による放映権ビジネスの世界戦略です。大谷翔平選手をはじめとするスーパースターの参戦によってWBCのグローバルな商業価値は急上昇しました。これに伴い、権利元が提示する放映権料は大会を重ねるごとに倍々ゲームで膨れ上がっています。
第2に、歴史的な円安トレンドの直撃です。WBCの放映権は米ドル建てで交渉されます。放映権料自体のドル建て価格が引き上げられた上に、円安が重なることで、日本側が支払うべき実質的なコストは前々回・前回大会と比較して天文学的な数字へと膨らみました。
第3に、民放キー局のタイムCM広告収入の伸び悩みです。数億円から数十億円規模にのぼる権利料を支払った場合、スポンサー企業からの広告費だけでは制作費を含めたコストを回収しきれず、放送すればするほど赤字が膨らむ「逆ザヤ」のリスクが現実化しています。この経済的摩擦こそが、「地上波撤退説」が現実味を帯びて語られる根本的な原因です。