ワッペン本体が綺麗に剥がれたとしても、布地の上に黄色や灰色の塊が残り、触るとペタペタする「糊残り」に頭を抱えるケースは非常に多いです。このワッペンの糊の落とし方を誤り、そのまま洗濯機に投入してしまうと、溶けた糊が周囲の繊維に拡散し、ホコリや汚れを吸着して黒ずんだユニフォームのワッペン跡として定着してしまいます。
繊維の隙間に入り込んだしつこいベタベタの取り方には、2段階の化学的アプローチが極めて有効です。
第1段階は「クッキングシートによる物理吸着」です。糊が残った部分に新しいクッキングシートを当て、上から中温のアイロンを数秒プレスします。熱で軟化した糊は、布地の繊維よりもクッキングシート表面のシリコン皮膜に引き寄せられる特性を持っています。シートが温かいうちにゆっくり剥がすと、残留糊の大部分がシート側に転写されて除去できます。この作業を、シートの当てる面を変えながら2〜3回繰り返します。
それでも繊維の深部に残った微細な接着剤には、第2段階として無水エタノールを投入します。無水エタノールは水分をほとんど含まないため揮発が早く、樹脂成分を細かく分解・軟化させる力に優れています。要らなくなった綿タオルを服の裏側に当て、表から無水エタノールを染み込ませたコットンや綿棒でトントンと軽く叩き込みます。糊が緩んだら、使い古した柔らかい歯ブラシで生地の折り目に沿って優しく掻き出し、最後に中性洗剤で揉み洗いを行えば、跡形もなくスッキリと除去できます。
なお、家庭にある除光液(アセトン主成分)も強力な溶解力を発揮しますが、化学繊維に対する攻撃性が極めて高い点に厳重な警戒が必要です。特にアセテート混紡のブラウスや、ポリエステルに特殊な撥水プリントが施されたスポーツウェアに付着すると、繊維そのものを溶かして穴を開けてしまう事故が発生します。除光液を使用する場合は、必ず目立たない裾の内側などで数滴テストを行い、脱色や生地の硬化が起きないことを確認した上で、綿100%素材に限定して使用してください。