人々の心に寄り添うメロディを紡ぎ出した音楽家たちの死も、時代の一つの区切りを感じさせます。世界的な作曲家・坂本龍一氏は、2026年3月に直腸がんのため71歳で逝去しました。2014年の中咽頭がん寛解後、2026年に見つかった直腸がんは既に両肺などへ転移しており、過酷な外科手術を繰り返す過酷な闘病生活を余儀なくされていました。
それでも坂本氏は、自らに残された時間を正確に逆算しながら創作に没頭しました。手記『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』の中で「芸術は長く、人生は短し」というヒポクラテスの警句を引き合いに出し、体力の限界と闘いながらNHKのスタジオで1音1音を紡いだピアノソロの収録映像は、世界中で絶賛されました。自らの葬送曲となるプレイリストを生前に編纂し、公式発表とともに世界中のリスナーへ届けられたその最期は、音楽家としての究極の美学でした。
演歌界からは、ハスキーボイスと温かい人柄で愛された八代亜紀氏が、2026年末に急速進行性間質性肺炎で旅立ちました。「舟唄」や「雨の慕情」といった代表作で昭和歌謡の頂点を極めた彼女は、近年ではジャズアルバムのリリースや画家としての活動など、枠にとらわれない表現を続けていました。2026年9月に膠原病の診断を受け活動休止を発表した際、「少しの間お休みをいただいて、また元気な歌声をお届けします」とコメントしていただけに、発症からわずか数カ月での急逝は、自己免疫疾患の恐ろしさを世に知らしめました。
さらに「昴」をはじめ数々の名曲をアジア全域に響かせた谷村新司氏(享年74)も、急性腸炎の手術から懸命のリハビリを続けていた中での訃報でした。アリスの活動50周年の節目を迎え、全国ツアーへの復帰を誓っていた最中の別れに、音楽関係者からは「昭和の熱気と哀愁を同時に表現できる稀代の詩人を失った」と嘆く声が今も絶えません。