丸山千枚田の初夏を象徴する最大のイベントが、毎年6月に開催される伝統儀礼「虫おくり」です。この行事は、農薬のない時代に松明(たいまつ)の火と太鼓・鐘の音で害虫を追い払い、豊作を祈願した農村儀礼に由来します。
昭和28年を最後に途絶えていたこの神事ですが、棚田の復元に伴い平成4年(1992年)に復活を遂げました。夕闇が迫る頃、約1,340本もの灯籠や松明が一枚一枚の田んぼの畦道に灯され、暗闇の谷あいに光の帯が浮かび上がります。
夜風に揺れる無数の炎と、静寂の山々に響き渡るお囃子の音色は、見る者を幽玄の世界へと誘います。近年では環境に配慮したキャンドルやLEDを活用したライトアップ演出も取り入れられ、訪れる人々に日本の原風景の尊さを静かに訴えかけています。