情報空間に氾濫する乾燥機ノウハウの中には、実用上のリスクを伴う誤解が定着しています。その最たるものが「柔軟剤を多量に入れれば乾燥機のシワを防げる」という言説です。
確かに柔軟成分(陽イオン界面活性剤)は繊維の滑りを良くしますが、規定量を超えて過剰に投入すると、化学繊維の吸水性を著しく損なうだけでなく、乾燥機のフィルターや湿度センサーにシリコン被膜が焼き付く原因となります。センサーが狂うと、生乾きであるにもかかわらず乾燥運転が終了したり、逆に過乾燥を検知できずに加熱を続け、シャツを焦がしたり芯地を破壊する事故を誘発します。
また、「完全ノーアイロンシャツならどんな乾燥機でも無制限に放り込んで良い」という認識も危険です。形状記憶加工の形態安定性は、一般的にドラム内温度60℃以下を前提に設計されています。コインランドリーの高温モードや、旧来型ヒーター式乾燥機のような80℃以上の環境では、形状記憶の基幹である樹脂架橋が熱変性を起こし、かえって歪んだシワを記憶してしまう逆効果をもたらします。素材のテクノロジーと家電のスペックが噛み合って初めて、アイロン不要の快適さが成立します。