本作の原点である『ワイルド・スワン』は、著者ユン・チアンの卓越した筆致によって世に送り出された。清朝末期の纏足(てんそく)の風習が残る時代に軍閥の愛妾となった祖母、共産党幹部として激動期を駆け抜けた母、そして紅衛兵を経験したのち英国へと渡った著者自身。激動の中国現代史を一身に受け止めた女性三代の歩みは、冷酷な国家のうねりと個人の尊厳との相克を赤裸々に暴き出した。
母国では発禁処分を受けながらも、世界各地で読み継がれてきたこの記録は、国家による記憶の改ざんに対する静かな抵抗の書でもある。映像化にあたっても、歴史の真実をどこまで妥協なく描き切れるかが最大の焦点であり、著者の妥協なき眼差しがプロジェクトの屋台骨となっている。