彼が土俵に上がると、館内の空気が一変した。最高位である関脇へと駆け上がり、大相撲本場所の土俵で繰り広げられた数々の名勝負。手首の骨折や腰の激痛、蜂窩織炎(ほうかしきえん)など、数々の重傷を抱えながらも休場を極力拒み、テーピングだらけの体で土俵に上がり続けた姿は、ファンの胸に深く刻み込まれている。
怪我を言い訳にしない。どれほど不利な体勢になっても、最後まで泥臭く白星を拾いにいく。そのストイックな姿勢は、単なる勝敗を超えた感動を呼んだ。立ち合いの鋭さと、長い腕を活かしたスケールの大きな取り口。勝って驕らず、負けて相手を称える土俵作法。彼が体現したのは、勝負の厳しさと美しさが同居する、古き良き日本の武士道精神そのものだった。